大腸がんの治療
大腸がんの治療には、進行具合や場所などによって様々な治療法がありますが、早期のものであれば、まず最初に考えるものは、内視鏡によってがんを切除する内視鏡治療です。今までであれば、早期発見でも開腹による外科手術が基本でしたが、内視鏡の技術の発達により、現在では、お腹にメスを入れることなく手術する事が可能になりました。それによって、お腹に傷が残らないだけでなく、臓器を切除する事がなくなり、体への負担が飛躍的に減ることや、入院期間の短縮つながり、早期の社会復帰も望めるなど、さまざまなメリットを得る事ができるようになりました。
現在日本は、この内視鏡治療において、世界一の技術があるといわれており、それはいまだに進化を続けています。しかし、この内視鏡で完全に切除できるがんは大きさや浸透度、つまり進行具合によって限られており、非常に優れた技術をもった医師でも、10cm程度のものまでしか切除できず、また浸透が深いものは、大きさにかかわらず、内視鏡で完全に切除する事は難しいのです。
その場合には、腹腔鏡手術と呼ばれる治療を行います。これは、お腹に10mm程度の穴を、患部にあわせて数箇所開け、その一つに先端にカメラの付いた腹腔鏡と呼ばれる内視鏡をいれ、中の様子をモニターに映し出します。前もって内視鏡にで患部に墨汁を注入する事で目的の場所を分かりやすくしておくところもポイントです。そして別の穴から腸を周囲からはがす器具をいれ、患部付近の腸を自由に動かせるようにします。そしてさらにお腹に5cmほどの切れ目をいれて、そこから腸を引っ張り出し、がんのある部分を切断し、吻合した後に、体内に戻すという作業になります。メリットとしては、切開する部分が小さいため、傷口が小さくて済む上、痛みも少なく、回復も早いです。また、合併症なども少ないという利点もあります。しかし、技術的にかなりレベルの高いものが要求され、場所や医師によっては適応できない場合もあります。また術時間も長いため、経験の豊富な高い技術をもった医師を探す必要があります。ただし、いくら技術的に素晴らしいものを持っていても、固有筋層やしょう膜などにまで浸潤している浸透性の高いがんは、腹腔鏡手術でも切除や摘出は難しいでしょう。
その場合は、基本である開腹手術を行います。また、早期発見されたものでも、場所などによってはこの治療が行われる事があります。例えば、直腸がんは、結腸がんよりも複雑で難しいといわれ、その理由として直腸は、せまい骨盤の間に位置し、その周りに膀胱や前立腺、泌尿器や生殖器といったものに関わる自律神経があり、これを傷つけてしまうと、排便機能や性機能などに重大な障害を与えてしまう危険性があるからだといわれています。さらに術前や術中、術後などに、補助治療として抗がん剤などの薬物治療も行いますが、こちらは、あくまでも手術の効果を高めたり、再発を防ぐ目的で使われ、基本的に大腸がんの治療は、がんの切除において他なりません。
このように現在日本では、外科手術の技術が躍進的に進歩し、がんの種類に合わせた手術治療に囲まれていて、臓器の温存術なども確実に進歩し、直腸がんによる人工肛門などの措置も減ってきています。しかし一番はがんにならないこと、そして万が一なってしまっても早期発見、これ以上のことはないのです。
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