大腸ポリープとの関係
もし、あなたが健康診断や人間ドックなど結果で、大腸にポリープがあると分かったら、きっと動揺してしまうのではないでしょうか。確かに大腸ポリープと大腸がんは密接な関係にあると言えます。
しかし、大腸ポリープ=大腸がんという考えは間違っており、一言にポリープといっても様々なものがありますので、ここではその種類と危険性を考えて行きたいと思います。
大腸ポリープの種類
大腸ポリープとは、腸の粘膜にできた突起物のことをいい、何かの病気を表すためのものではありません。大きく分けて言って大腸ポリープは、がんになるものとそうでないものの2種類あります。それは腫瘍と腫瘍以外のポリープといい、腫瘍以外のポリープからがんになることはほとんどなく、腸の炎症が治るときに出来るものや、老化が原因のもので、放っておいても安心できるもので、切除もしない場合がほとんどです。
問題なのは、腫瘍と呼ばれるほうのポリープなのですが、この腫瘍が全てがんであるのかというと、これもまた違い、良性のものと悪性のものがあるのです。この、悪性の腫瘍をがんといい、良性の腫瘍を腺腫と呼びますが、腺腫は、大腸ポリープの8割をこれが占めており、一般的に大腸ポリープとはこの腺腫を指すことがほとんどのようです。また、例えこれが悪性のものだったとしても、進行した大腸がんは、ポリープの形状を取らない事から、初期の段階のがんという事になり、早期の切除により、ほぼ完治の見込みのある段階といえるでしょう。しかし、良性のほうの腺腫と判断されても、安心は出来ません。
なぜなら、この腺腫からがんに発展する事があるからです。ではどのくらいの可能性で、腺腫ががんになるのでしょうか。カギとなるのはその大きさになります。
大腸ポリープ(腺腫)の危険性
一昔前であれば、腺腫を含めた腸の中の腫瘍は、全てがんだとされてきましたが、現在では、腺腫からがんになるものは、ごく一部のものだと分かりました。それは、腺腫の大きさが直径1cmを超えた場合のものです。
ある研究結果では、この場合、30%程度の確立で、がんが発生するというデータがでました。また、2cmを超えるとさらにその確立も倍増するといわれており、腺腫が1cm以下の発生率の5%程度から、飛躍的に確立が跳ね上がっていることが分かります。しかしこれは珍しいケースで、通常であれば腺腫は2~3mm程度の大きさで留まっているものがほとんどのようです。
どの腺腫が、そこから1cm以上のものに成長するかという事は、実はまだよく分かっていません。しかし、実際に腺腫ができた患者にとって、それが良性のものか、がん化する可能性があるかという違いは天国と地獄ほどの差があるでしょう。では、どのような腺腫だと、切除しなければならないのでしょうか。
ポリープの切除・摘出
先に述べたように、以前までは腺腫という腺腫はすべてがんの元とされていて、発見された段階で、切除、摘出されていました。しかし最近では、日本においては6mm以上の大きさがあるものに絞って切除、摘出を行う傾向に変わってきています。あるアンケート調査では、5mm以下のポリープであれば99%ががんではなく腺腫だというデータがあります。しかしこれが6~10mmになると線腫が88%で残りの12%ががんであるという結果が出ており、確率が10倍以上に上がります。しかもこの88%の腺腫のうち、約2割程度が前がん、つまり、がんになる手前の状態にあるといわれており、高度異型と呼ばれるその腺腫は、日本では摘出の対象になっています。
したがって、大きさが6mmを超えると、高度異型の前がん状態の腺腫を含め、30%以上のポリープが切除・摘出の必要があると言えます。つまり、ひとつの目安として、5mm以下の大きさのポリープならば、すぐに切らずに経過を見るようにし、6mm以上あった場合は、がんになる危険性を考え、切除・摘出を考えなければいけないということになります。ただ、注意しなければならないのは、5mm以下の腺腫でも、ポリープの形をしておらず、平坦であったり、でこぼこしていたり、特殊なものは、原則として、摘出の対象になっています。
このように大腸がんは、ポリープを切除する事によって発生の危険を防ぐ事が出来ますが、切ってしまえばそれで安心と言い切ることが出来るのでしょうか。ここで考えなくてはいけない事は、なぜポリープができたかということです。前からご紹介してきたように、ポリープが全てがんになるわけではありませんが、ポリープががんの原因であることも事実です。そしてポリープは誰にでもできるわけではありません。ほぼ確実に、できやすい体質の人がいるのです。
良性のものも多いポリープですがその中には確実に悪性の腫瘍もあります。つまり、ポリープができる、あるいはできたということはそれだけで、できない人よりも大腸がんになりやすいといえるのです。それを裏付けるかのように、一度腸に腫瘍が発見された人、特にそれが複数だった場合、それががんか、腺腫かは関係なしに、別の場所に腫瘍が見つかるケースが多く見られるのです。
確かに一度切除すれば、切除しなかった場合よりは再発の確立は下がります。しかし、一度も腫瘍が発見されていない人のデータと、切除して摘出経験のある人のデータでは、5年後に新たに腫瘍が見つかる確立は、摘出経験のある人の方が3倍も高いという結果がでています。
このことから、一度でも腸にポリープが見つかった人は、過度に意識して神経質になり、ストレスを溜め込む必要はありませんが、自分がポリープができやすい体質かもしれないという可能性を疑い、定期的な検診を受け、日常生活のなかで、大腸がんの発生を防ぐ行動を心がけることを強くお勧めします。
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