大腸がん
日本においてがんは、昔から死亡原因の1位であり、現在もそれは変わりません。その中で大腸がんは「21世紀病」と呼ばれるものの一つとされるなど、近年増え続けている病気です。
がんで亡くなった人の部位別順位を見てみると、2009年の段階で、全体では肺がん、胃がんに次ぐ3位になっており、女性だけで見ると、胃がんを抜いて1位にいます。さらに、罹患率で言えば、1位が胃がんで、大腸がんは2位にあたり、年間で10万人に近い数の人たちが大腸がんと診断されているのです。そしてそれは増え続け、5年後には20万人を超える大腸がんの罹患者になるのではないかと予測されています。
このように大腸がんは、日本人の近い将来、死亡率や罹患率でトップに成り得る病気であり、大変注目が集まっています。当サイトではこの大腸がんに目を付け、様々な情報をご紹介します。大腸がんは早期発見で完治する可能性が非常に高いがんです。ですからここで大腸がんのことを知って頂き、予防や治療に役立てていただければ幸いです。
大腸がんの原因
なぜ、今大腸がんが増えているのか
ご紹介したとおり、大腸がんは日本において、ここ最近著しい増加の傾向が見られる病気です。その背景には日本人の食生活の変化が大きく関係しているといわれています。
それには主に、食の欧米化が上げられていますが、昔の日本人は、米、麦、あわやひえといったような、穀物を主食に、野菜や海草、イモ類や大豆などの豆類を食べて生活していました。このような食物には食物繊維が多く含まれており、ここからエネルギーを効率よく吸収しようと、日本人の腸はどんどん長く成長をしていったといわれています。しかし、第二次世界大戦後から、その食生活は激変し、肉類、卵類、乳製品などの摂取量が劇的に増加し、反対に食物繊維は減っていきました。この食物繊維は腸の清掃の役割を担っていた為、それらの減少は腸の病気の増加の原因の一つではないかと考えられています。それから、ストレスも腸に大きな影響を与えるといわれており、それが原因で大腸がんや他の消化器の病気を引き起こす原因になると考えられています。その事を考えると、あらゆるストレスで満ち溢れた現代社会において、大腸がんを含めた様々な消化器の病気の増加は、当然の結果なのかもしれません。
大腸がんはどのような病気なのか
そもそもがんとは、体の細胞にできた腫瘍が、無制限に周りの細胞を破壊しながら増殖し、様々な場所に転移を繰り返す悪性腫瘍の一つであり、その中でも最も有名なものです。大腸がんはこの悪性腫瘍が大腸に出来た場合の事を言います。ただ、一言に悪性腫瘍といっても様々な特徴を持ったものがあり、がんにおいては、「文化度」というもので、悪性度を見分ける事が出来ます。簡単に言うと、成長の遅いがんを「高分化がん」、成長の早いがんを「低分化がん」と呼びます。高分化がんは、正常な細胞から出来たがん細胞が、もともとの形や機能をかなり残しており、進行も遅く、増殖する力も弱いことから、がんの中でも比較的温厚なものとされています。反対に低分化がんは、正常だった頃の細胞の原型がほとんどなく、増殖力が高くとても進行が早いものです。大腸がんの多くの場合、「高分化がん」のケースが多く、がんの中では比較的進行の遅いものになっているので、早期発見ができれば、十分完治の見込めるがんといえます。それを裏付けるように、大腸にかかった人が、年間10万人に近い数字なのに対して、実際になくなった方は4万人弱と、実に6万人近くの大腸がん患者が治療によって助かっている事になります。
大腸がんになりやすい人はどんな人か
「がんは遺伝する」といったようなことを効いた事がある人は多いのではないでしょうか。
確かに言われてみれば、私の回りでも、自身ががんを患ったという人で、実は親もがんにかかったことのあるというケースは多いような気がします。しかし、大腸がんを含むがんは、遺伝子の異常により引き起こる病気ではありますが、それは遺伝するものではありません。
ごく一部のがん(例えば小児がんの網膜芽細胞腫など)は遺伝が関わっていると言われていますが、基本的にがんは遺伝しませんし、大腸がんも例外ではありません。ではなぜ、親子でがんにかかってしまうケースが多いのでしょうか。それは、遺伝ではなく、環境的要因が大きく関わっていると言われています。つまり食生活や、生活環境は、大腸がんには影響が大きいということです。
特に脂肪の摂取が多く食物繊維をあまりとらない人は、大腸がんになりやすいといわれています。またがんになるメカニズムとして、直接がんが遺伝することはありませんが、本来私達の体には、がん抑制遺伝子というものがあり、これが染色体が細胞分裂する際に、正常に行えるようなサポートをしてくれ、がん遺伝子になることを防いでくれているのですが、このがん抑制遺伝子に何かしらの異常(原因は、加齢であったり、外部からの刺激、例えば発がん物質や放射能など様々)が起ることによって、がんになるという場合がほとんどなのですが、血縁者の中にがんの罹病経験者がいた場合、このがん抑制遺伝子に異常が発生しやすいのではないかと考えられ、その結果、家族にがんにかかったことがある人がいた場合、自身にも注意が必要だと考えられます。なお、大腸がんにおいて、ごくごくまれに、家族性大腸腺腫症という、突如として、大腸の全域に1000個以上のポリープが発生するという病気があり、これは遺伝性の病気ですが、放っておくと100%大腸がんになるという珍しい病気もあります。また、腸の病気として、腫瘍性大腸炎というものがありますが、この病気は大腸全体に腫瘍が広がる場合があり、その腫瘍自体はがんではありませんが、完治が難しいといわれている病気で、これを慢性的に患っていた場合にも大腸がんを併発するケースがあるので、10年以上病歴がある方は、年に一回の定期的な検査をお勧めします。
それからこれは、大腸がんに限った事ではありませんが、年齢を重ねるごとに、がんにかかるリスクは上がるといわれており、大腸がんにおいても、最も多く罹患している人は60代で、70代、50代とそれに続いています。男女の差はあまりないようですが、男性のほうが多いようです。
人間は誰でも年を取るもので、それは防ぎようのないことです。ですから、現在健康な方でも、40歳を越えたあたりから、定期的な内視鏡検査や便潜血検査などを受け始めることをお勧めします。自分は大丈夫と思っていても、大腸がんの初期症状では、自覚症状が余りありません。「もしかしたら」という、がんの予防にはその心がけがとても大切なのです。
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